ハセツネカップ「負け惜しみ」の弁 ――余は如何にして「敗者」となりし乎――
先日のハセツネカップ。
初出場のK.K君の見事な快走ぶりについては、前述の通りであるが、コースをまったく知らない最年少者ということを考えれば、第3関門までの健闘は賞賛に値するだろう。加えて、そのペースを維持したままゴールしていたなら軽く15時間切りも達成していたにちがいない。その唯一悔やまれる最終区間も、力尽きてペースダウンしていたのではなく、あくまで仮眠していたからというのだから、実に泰然としていて頼もしい限りだ。
あの「ウサギとカメ」の話になぞらえるならば、すでにいっぱいいっぱいながらマイペースを刻んできたカメのようなわたくしが、ウサギのような彼の横をすり抜け、慌てさせるべきであったのだろうが、実際には、彼の目覚まし時計の役目も果たせなかったようである。
そんな鈍ガメが、ここにレースを回想して「負け惜しみ」をひとりごちている。
◆富士のシルエット
全長71.5kmに及ぶ気の遠くなるようなコース。出だしの第1関門までが殊の外、つらい。レース序盤は、まだ身体も重く、汗の出も不規則で定まらない。
しかし、唯一の救いは、まだ日没前で明るいということ。つまりは、周囲の景色を味方につけることができるのだ。
とりわけ今年は幸運にもここ2年間の悪天候の鬱憤をはらすかのような快晴だ。徐々に茜色に染まり始めた西の空には、さえぎるものなく鮮やかに富士のシルエットが浮かび上がってきた。
その姿にじっと見惚れているカメが、一匹いた。
「かあちゃーん! おいらもがんばっとるよー! おまえさんもがんばれやー!」
ちょうど、そのころ我が家のカミさんは、故郷に錦を飾るように、富士の裾野の駿河湾に面した三保の松原の特設ステージにて天女のごとく華麗な舞いを披露しているはずであった。
そのことを思い出し、カメはしぜんと足の動きを止めたのだった。
それとは知らず、ウサギはその横をそんな感傷的な雰囲気など微塵も感じさせない勢いで通り過ぎていったのだろう。
願わくば、ウサギさんにも、しばし感傷の淵に浸ってほしかったなあ・・・・・・「おかあちゃーーーん」と。
◆数馬の湯
第2関門までにはコース中最高地点である三頭山越えがある。そのことを「知らない」と「知っている」のとでは精神的にずいぶん違う。ここでは、「知っている」ことの有利さよりもかえって「知っている」ことによる重圧の方が大きいのだ。つまりは「知らぬが仏」ということである。
そんな三頭への登りにさしかかろうとする手前にて、ヘッドランプがある一つの標識を映し出した。カメはここでもしばし足の運びをとめることになる。
〈 数馬の湯 → 〉
このときカメの心に去来したものは想像に難くない。
とっさに、あの宮崎アニメの大作『千と千尋・・・』の「湯屋」が浮かんできたのだ。そして、あろうことかこの山中に宿る多くの山の神々らと同行してそそくさと「数馬」の里に下り立つ様をカメは夢見ていたのだ。
願わくば、ウサギさんも、この「湯の国」日本の魅力にのぼせあがってほしかったなあ・・・・・・「い~い湯だな♪」と。
◆?万ドルの夜景
かつて、中国入りする経由地として香港に立ち寄った際、その「百万ドルの夜景」なるものをタイガーバームのにおいにつつまれながら眺めたことがある。
そのときの感想は「ふーーーん」であった。
それに比べ、このたびの奥多摩山中から東側全域に広がる夜景は、その価値に値段をつけられるような代物ではなかった。
さながら、不夜城とその周辺に広がる、これまた眠らぬ大城下町といった印象であった。樹間から垣間見るそれもすばらしかったが、最後のピーク、日の出山の山頂からの眺めは筆舌に尽くしがたいものだった。
わたくしは、常々自分をストイックな仮面をかぶったエピキュリアン(快楽主義者)だと思っている。また、ロマンチストを装ったリアリスト(現実主義者)でもある。
したがって、この壮大な夜景になにを見て、なにを思ったか。
それは、言わずもがなである。
たとえばそれは、日の出山に居ながらにしてすでに頭の中では「赤ちょうちん」で祝杯をあげていたのである。そして、ネオンの波間をたしかな千鳥足で漂っていたのである。
嗚呼! 願わくば、ウサギさんにも、早くこの感激を味わってほしいものだなあ・・・・・・「カンパーイ」と。
◆最後に「負け惜しみ」ついでにもう一つ。
ウサギより、カメが優れている点。それは、一分一秒でも長――く山懐に抱かれていたいという「自然を愛する純粋な気持ち」だい!
えーい、文句あっか!
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コメント
お疲れ様でした!
高校生の怖いモノ知らずの若いパワーにはなかなか勝てません(キッパリ)。でもmoaiさんも、年々数時間単位!で自己ベスト更新してらっしゃってすごいなーと思います。名簿みると79歳で挑戦されている方もおられるようで…目がテン! その人からみればmoaiさん達もその高校生のようなものかも?! まだまだ何十年ってチャンスはありそうですね。^^
それにしても自力で辿り着いて眺める、?万ドルの夜景は、ほんと、価値がつけられないでしょうね。去年はそれどころじゃなかったでしょうし。
苦しくとも満面の笑みだったのでは? 羨ましいー! ダンナが走らなくても休まず歩き通せば24時間以内に完走できるコースだと言っておりましたので、一度くらいは出てみたいなぁと思いますが、勇気がありません。
投稿: runrun | 2006.10.13 08:52
も、文句ございませぬ(笑)
「負け惜しみ」の弁。。。面白かったー
moaiさんたら 正直でいいですね♪
山を要所要所で 満喫なさったのですね~
(年の功ですね。。あはは)
愛しの「かあちゃん」も きっと同じ頃
「とーちゃ~~~ん」と 叫んでいたに違いない?
投稿: りんごママ | 2006.10.14 00:58
あらゆるスタイルの「ラン」に﨟長けたモアイ像ばりのカメさんと、ハセツネ初参戦のフレッシュ高校生K君ウサギさんの「物語」。
抜けるような秋空の下、夫々に実りある味わい深いレース展開だったと感服しました。後方支援の応援団の皆さんとの結束をも含めて。
マラソンは「人生」に通じる・・・タイムや順位に拘るだけで終わるのはモッタイナイ。
その辺も、これから可愛く頼もしいウサギさんにも体得して貰えるといいですな。
そして、何れまちがいなく、カメとウサギが高々と祝杯を上げる『最高の日』も近い。
いやぁーー羨ましい!!
投稿: 沼津アルプス | 2006.10.14 10:07
>runrun様
runrunさんなら、十分高校生ともはりあえますよ!来年あたり、お待ちしてます。
投稿: moai | 2006.10.14 22:52
>りんごママ様
とうちゃん、がんばって留守がいい!
投稿: moai | 2006.10.14 22:54
>沼津アルプス様
その通りですね。
今年のような、これ以上はないというすばらしいコンディションでも、完走率は7割だとのこと。
あの、石川弘樹選手でさえも、膝を強打して、34キロメートル地点でリタイヤだとか。
完走できただけでも、ウサギとカメは、幸せ者です。
投稿: moai | 2006.10.14 22:59